DPATに「報酬評価を」  胸を張って支援に行けるように【無料】

2024年3月29日 4:30

取材に応じた(左から)小原氏、野木氏、深澤氏

 災害派遣精神科医療チーム(DPAT)事務局の野木渡事務局長(日本精神科病院協会副会長)は本紙の取材で、DPATを派遣する病院に対し、診療報酬や税制上のインセンティブが必要だと訴えた。現在はインセンティブがないため、被災地支援に対する職員の理解を得にくいと説明。「DPAT隊のメンバーが、胸を張って被災地支援に行けない」と問題意識を示した。

 DPAT事務局は、厚生労働省の委託を受け、日精協が運営している。事務局に登録するDPAT先遣隊は、被災都道府県からの派遣要請に基づき、精神科医療ニーズへの対応などを担う。

 1月に発生した能登半島地震でも、避難所や集落を回り、災害のストレスによる被災者の精神的問題などに対応した。

●マイナス人員で通常業務、「補償がない」

 災害派遣医療チーム(DMAT)を派遣する病院は、DPCの係数で、平時から診療報酬上の評価が設けられている。しかし、DPATは評価がない。野木氏は、災害支援を行う団体で、厚労省の委託事業になっているのはDMATとDPATだけだと説明。DMATと同様に、DPATへの評価も求めた。

 DPATを派遣した病院は、マイナス人員で通常業務に当たる。その補償がないことが一番の問題点だと、野木氏は強調する。

 能登半島地震でDPATとして活動した小原尚利氏(日精協災害部会長)は、被災地に向かう際に、「外来はどうするのか」と通常業務の負担増を懸念する声が病院職員から出たと振り返った。

●DPAT関連の負担、実態把握へ  日精協

 野木氏は、DPATの取り組みを多くの病院に広げていくためには、装備や訓練など、平時の準備で生じる費用が病院の持ち出しになっていることも課題だとした。

 小原氏は、災害支援活動で生じた費用は後から支払われるが、「平時からの準備に要する費用は何ももらえない」と説明。災害対応に備えた訓練のモチベーションを維持する観点でも、インセンティブが必要だとした。

 DPAT事務局の深澤隆氏(日精協理事)も、「衣服などの装備費、研修や訓練など、平時から隊の機能を維持するための費用は、病院の持ち出しになっている」と指摘。負担が大きいとした。

 日精協は今後、DPATを派遣する病院について、負担の実態を把握する方針だ。

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