被災地の看護師に「疲労の色」  第1陣支援の山本氏、体験を語る【無料】

2024年1月17日 4:30

破損した天井の送風口を応急的に補修する災害支援ナース(山本氏提供)

 能登半島地震で災害支援ナースの第1陣(6日~9日)として、岐阜県看護協会から派遣された県立下呂温泉病院放射線科の看護師、山本泰大氏(39)はじほうの取材で、被災地に住む看護師について、責任感に支えられて働いているものの「疲労の色が見えた」と述べた。看護師派遣の課題として、情報伝達・指示系統の確立を挙げた。

 5日正午過ぎ、勤務先に派遣要請の連絡があり、初めて災害支援ナースとしての仕事に従事した。6日午前7時に地元を出発し、活動拠点本部がある石川県七尾市の公立能登総合病院に到着したのは正午ごろだった。午後1時には、派遣先である穴水町の公立穴水総合病院に向かったが、道路状態が悪い上に渋滞も発生し、通常は1時間程度の道のりを3時間近くかけて到着した。

 穴水総合病院は、100病床がほぼ満床だった。施設に致命的な損壊はなかったが、連絡通路の境界部のずれ、天井部の空調送風口の破損といった被害があった。断水状態にあり、ペットボトルや給水車の支援はあったが、水の使用制限を余儀なくされていた。

 現地在住の医療従事者について、山本氏は「自宅が被害に遭った人もいたが、なかなか帰れないし、休憩も十分に取れていない」と説明。全体的に混乱状態が続いており、「到着した時は、本当に発生から6日もたっているのかという状況だった」と振り返った。

 山本氏は、入院病棟で業務に当たった。日勤ではあったが、スポット的に夜間ケアも支援した。しかし、「24時間サポートできる体制ではなく、まだまだマンパワーが足りない」と感じた。

 余震が続いて物の落下などが相次ぐ中で、精神的に不安定になった入院患者と、過酷な労働環境で疲弊した医療従事者の関係性が、一時的にぎくしゃくする雰囲気もあった。ただ、災害支援ナースの到着によって、緩和された部分もあったという。

 災害支援ナースは自己完結型が基本で、山本氏らも、車中泊の準備をして現地に向かった。今回は、病院側が災害支援ナース用の控え室を用意してくれたため、チーム内で控え室組と車中泊組に分かれて休憩を取った。

●情報共有の時間、「医療業務に充てられたら」

 今回、山本氏が感じた最大の課題は、「情報伝達や指示系統の確立」だ。先発隊ということもあって、どのような業務を、どのような指揮命令系統でやるか、確立していなかった。報告系統も一本化していなかった。「情報共有に割く時間を、医療業務に充てられたらと思うことがあった」と語った。

 「予測できるものではないので準備は難しいが、各現場の状況にフレキシブルに対応できる後方支援の枠組みがあれば」と問題提起した。

 病院や地域の災害対応に役立てるため、災害支援ナースに登録していた山本氏。今回の経験について、「振り返って考えをまとめながら、今後に生かしていく」とした。

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