再開する日常診療、「地域に返すフェーズ」へ  熊本地震・現地発(中)【無料】

2026年8月10日 16:30

救護室での診療風景。さまざまな患者が訪れる

 「吐き気は大丈夫? 下痢が1回あったかな。ちょっとおなかを触らせてくださいね」

 TMAT(徳洲会医療救援隊)の第2陣で八代市に入った、医師の當麻俊彦氏(八尾徳洲会総合病院)が、患者に語りかける。避難所の「八代トヨオカ地健アリーナ」に設置した救護室だ。

 當麻氏は5日に現地入り。午後5時前に、それまで診察をしていた第1陣の医師、伊藤真之介氏(宇治徳洲会病院)からバトンを受けた。
 


第2陣メンバーの医師、當麻氏

 抜糸のために訪れた女性もいた。7月29日に救護所で足を縫ってもらったという。救護所には、さまざまな訴えを持つ患者がやってくる。

 第1陣の隊長を務めた医師の合田祥悟氏(札幌東徳洲会病院)によると、救護所で診る1日の患者数は、設置当初60~70人程度、その後は30~40人ほどになった。徳洲会のまとめでは、5日の受診者は18人、6日は19人、7日は21人、8日は30人、9日は19人と推移している。
 


他の避難所を巡回中の合田医師

 診療内容の変化については「地震に関連する外傷から、現在はPTSDのような、精神的な症状が少しずつ増えている。避難所生活が1週間になり、内科的疾患も出ているのが現状」(合田氏)だ。

 医薬品に関しては「家がつぶれ、薬を持って来られないケースがあった」と説明。そうした理由から「慢性疾患の増悪は起こりうる」という。他方で「災害処方箋をモバイルファーマシー(福岡県薬剤師会)で対応してもらったり、マイナカードに薬の情報がひも付いていて読めたりなど、薬にはある程度、対応できた」と発災からの1週間を振り返る。

 合田氏は5日午前のミーティングで、周辺のクリニックや薬局が少しずつ再開してきていることを伝え「(患者を)地域に返していくフェーズが始まっている印象がある。かかりつけが開いていれば、そこを受診できるかどうかの検討をしてほしい」と話した。救護所の状況、疾患の内容、周辺の状況からも、医療の局面が変わっていることが分かる。
 


被災した鏡クリニック


鏡クリニック近くで被害を受けた鹿児島本線。電車は止まっている

●「残る問題は水」  鏡クリニック

 熊本県内で唯一の徳洲会グループの医療機関「鏡クリニック」は、外来診療を再開した。震度7を観測した氷川町に隣接する鏡町に位置しており、電気や水道などのライフラインが停止。配管断裂などの被害もあった。外来で透析を受けていた患者17人は、TMATが他の医療機関への受け入れを調整・実施した。現在はその多くが戻っている。

 「透析も再開し、通常診療に戻っている。後は水の問題だけ」

 クリニックの谷口秀一事務長が言う。5日時点で断水は続いているが、透析は専用のタンクに給水車から水を入れて対応中。他に必要な水は、ペットボトルや井戸水を職員が持ち寄るなどしている。谷口事務長は、現時点(5日)で、八代の6割程度のクリニックが再開していると見通した。

 「水」という課題は残しつつも、八代市に日常診療の景色が戻りつつある。

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