情報把握と訓練、重要性を再認識  富山大病院、能登地震対応で【無料】

2024年3月1日 4:30

石川への医療支援にも取り組んだ富山大付属病院

 能登半島地震で被災し、隣県の石川県への医療支援にも取り組んできた富山大付属病院。林篤志院長、災害・救命センター長の土井智章教授はじほうの取材で、震災対応を振り返り、被災状況などの的確な情報把握や、自院で定期的に災害訓練を行う重要性を再認識したと説明した。

 1月1日午後4時10分ごろに起きた地震で、付属病院のある富山市は震度5強の揺れに見舞われた。病院の建物への被害は軽微で、診療に大きな影響は出なかった。だが、発災当日は起動しないエレベーターに代わって夕食を人海戦術で配膳するなど、トラブル対応も余儀なくされた。

 基幹災害拠点病院である付属病院は、県の要請を受け、発災翌日の2日午後には石川県能登町にDMATを派遣。これまで計4隊を出して石川で医療支援に当たった。ほかに、広域医療搬送拠点(SCU)、災害支援ナース、JMATからの依頼に基づく派遣などにも対応してきた。

 土井教授は、多くの患者の受け入れが想定されたため、最初のDMAT派遣について、「病院の重要なメンバーを現地に出していいのか」と、葛藤もあったと説明。しかし、「被害が大きな石川県の隣県の大学病院として、DMATを出しながら、多くの患者の受け入れも行う考えで対応した」と振り返る。

 院内では、医師らを被災地支援に送り出すための勤務シフトの見直しや、入院を予定していた患者とのベッドの調整に追われた。

 多忙を極めたのは1月16~25日。被災した患者らの受け入れが増え、実質的に稼動していた病床数を超えた。石川や富山からの被災患者の受け入れは、2月20日時点で累計54人になった。受け入れ要請は一つも断らなかったという。
 


取材に応じた(右から)林病院長、土井教授

 現在は少しずつ落ち着きを取り戻し、発災前の通常診療の状態に戻ってきた。4月には医師の働き方改革、6月には診療報酬改定が迫っているが、準備は遅滞なく進んでいるとした。

 今回の震災で得た教訓として、「的確な情報把握」と「日ごろの備え」を挙げる。

 大きな災害の発災直後、被害状況や患者受け入れなどの情報は錯綜しがちだ。林院長は、そうした情報を吟味するために、「大学と県が今以上に協力し、情報収集・共有に取り組めた余地はあったのではないか」と話した。

 大型の災害訓練は、新型コロナの影響もあって控えてきた。「(今回は)組織一丸で対応できているが、日ごろから災害訓練に取り組めていれば、よりスムーズに対応ができたと思う」と述べた。

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