ドクターカーによる5000件以上の対応実績を持つ日本医科大付属病院(東京都文京区)は、車の老朽化に伴い、新規購入資金を確保するため、クラウドファンディングを実施している。良好とは言えない都内の救急医療体制をサポートしてきたが、ドクターカーの運用は病院の収益に直結しないため、資金集めが課題になっている。救命救急科の横堀將司部長は、都内の救急体制を悪化させるべきではないとして、協力を呼びかけている。
都内は狭い道や歩行者が多いこともあり、119番通報から救急車の現場到着までの時間や、病院に搬送されるまでの時間が、全国平均を上回っている。生存率や社会復帰率は、全国でも最低水準だ。
横堀氏は、都内でドクターカーを持つ施設は9カ所にとどまると説明。ドクターカーが出動し、迅速・適正に患者を診断することで、不搬送を判断できる側面もあるとした。限られた救急医療のリソースを有効活用するため、ドクターカーは必要と訴えている。
日本医科大病院は2001年から、ドクターカーを運用。都内の文京区、台東区、荒川区を中心に、約50万人の住民をカバーしている。
21年の実績では、ドクターカーで診療した患者の他院への搬送は、全体の42%。自院への搬送はその半分以下の19%で、自院の収益につながらない構造がある。不搬送は34%だった。
現在は、ハイブリッド乗用車型のラピッドカーを保有する。しかし、11年以上使用しており、経年劣化で頻繁にバッテリーが上がる。各種備品の交換や修理も必要で、安全な運用が難しくなっている。
このため、今月から、READYFOR社のクラファンで、購入資金の募集を始めた。募集期間は3月29日までで、目標額は1215万円に設定した。
▽環境に負荷の少ない電気自動車で安全性能の高い四輪駆動車を候補とした、新たなラピッドカーの購入▽他の緊急車両と差別化するためのサイレン装置の設置▽電気配線設備の設置―の費用に充てる計画だ。
目標額に達した場合は、10月にも新車両の運用を始める見通しだ。目標額に届かなかった場合、プロジェクト全体を不成立とし、支援者に返金する。20日午後10時時点では約696万円が集まっており、進捗率は57%となっている。
横堀氏は、プロジェクト不成立でドクターカーの買い換えができない場合、「安全のことも考えて、ドクターカー活動を制限するしかないと思っている」と話した。詳細は、READYFOR社のホームページを参照(https://readyfor.jp/projects/nms-drcar2024)。
※2月22日から無料公開にしました。