避難者の服薬継続、「オン資」が一役  能登地震、薬剤情報閲覧で【無料】

2024年2月7日 17:22

被災者の服薬継続に役立っている「オン資」

 能登半島地震で、お薬手帳などを持たずに能登地方から金沢市内に避難している被災者の服薬継続に、オンライン資格確認システムの薬剤情報が一役買っている。オン資には、マイナンバーカードがなくても災害時に薬剤情報を閲覧できる機能があり、医療者が避難者の服用薬を特定する作業の効率化につながっている。

 医療機関・薬局にオン資の原則導入が義務付けられた昨年4月以降、能登半島地震は初めての大災害となった。

 マイナ保険証の利用が広がらない中、被災地で役立っているのが「災害時医療情報閲覧機能」。災害時に、患者の過去の服薬情報などをマイナカードなしで閲覧できる。厚生労働省は地震が発生した1月1日にこの機能を開放し、現時点では石川、富山両県の21市町で2月14日まで利用可能になっている。

 厚労省保険局の医療介護連携政策課によると、1月中旬までに約1万2000件の利用があった。
 


避難者のために、オン資を活用している「かがやきクリニック」

 金沢市のかがやきクリニック(清水雄三院長)では、能登地方から親類などを頼りに避難してきた被災者を、外来や在宅で診察している。お薬手帳やマイナ保険証を持つ患者はほとんどおらず、オン資の薬剤情報を活用。清水氏は「服用している薬が分かるだけで、病歴や疾患が推察できる」と重宝がる。

 従来は、受診医療機関への問い合わせや、患者からの聞き取りで服用薬を特定する必要があった。同クリニック薬剤師の小林星太氏は、「オン資の薬剤情報のおかげで、避難先の医療機関でもすぐに処方箋を発行できる。災害医療の業務が効率化したのは間違いない」と話す。

 1.5次避難所の「いしかわ総合スポーツセンター」(金沢市)の臨時診療所では、協力薬局が提供した避難者の薬剤情報を基に医師が診察し、処方箋を発行している。 

 臨時診療所の処方箋を応需する「とくひさ中央薬局」(同市)。薬剤師の金谷祐希氏は「患者本人に(服用薬を)聞いたところで正確かどうか確認できず、持参薬があってもそれが全てとは限らない。薬剤情報がなければ、必要な治療が継続できなかった可能性もある」と語る。

●「臨時診療所からもアクセスを」

 薬剤師からは課題を指摘する声もある。閲覧できる薬剤情報はレセプトベースのため、約1カ月のタイムラグが生じ、直近の処方変更・追加を把握できない。また、オン資に登録した医療機関・薬局だけでなく、避難所の臨時診療所などからも薬剤情報にアクセスできるよう求める意見もある。

 医療介護連携政策課は、アクセス対象施設の拡大について、「本来の目的以外に使用される可能性もある」として慎重な姿勢を示している。

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