恵寿総合、病床使用率が9割に  被災地・石川、医療逼迫が課題【無料】

2024年1月31日 4:30

能登半島地震で被災した恵寿総合病院

 能登半島地震で被災した恵寿総合病院(石川県七尾市)の神野正隆理事長補佐はじほうの取材で、「疲労困ぱいの中でも、職員全員が『能登中部の医療を止めない』と気概を持って取り組んでいる」と述べた。一方で、「病床使用率はすでに90%に達している」とし、限界に近づいているとも訴えた。

 病床の逼迫は、県内の他病院でも起きていると説明。「2次避難所や2次福祉避難所など、次の受け入れ先を早急に整える必要がある」とした。

●職員の1割弱、自宅以外から出勤

 1月1日の発災時、病院には約250人の入院患者がいた。3つの棟のうち、2つは天井が落ちたり配管に亀裂が入ったりと、大きな被害が出た。2014年に新設した免震構造の病棟は、ほぼ支障がなかったため、リハビリ室や内視鏡室などに仮設の病床を置き、別の病棟にいた入院患者全員をその日のうちに移動させた。

 免震構造の病棟は、地下水をろ過して循環して使う仕組みになっているため、手術や手洗い、飲み水、シャワーに使う水を確保できた。このため、2日には分娩や緊急手術を実施。4日には外来も再開した。

 神野氏によると、県内の災害拠点病院の中でも、震災後の患者受け入れ状況に差が生じている。中部地域の新規入院患者の多くは、恵寿が受け入れているという。

 もともと、恵寿の病床数は426床。病棟が地震で破損したため、26日時点で使える病床は366床だ。その90%に当たる330~350人が入院している。

 介護施設などを含めたグループの職員1500人のうち、1割弱は自宅以外から出勤している状況だ。40人は避難所から通っている。市内全体では、現在も断水が続く。神野氏は「自宅では風呂に入れず、ただ寝に帰るだけで、翌日出勤する毎日だ。職員の疲労もピークに来ている」と話した。


建物の損壊部分を指し示す神野理事長補佐

●県内の病床逼迫、手術・救急にも影響

 金沢市などの病院でも、甚大な被害が出た能登半島北部から多くの患者を受け入れたため、病床が逼迫していると指摘した。

 石川県病院会議の報告書を踏まえ、神野氏は、1000人の患者が緊急避難的に、石川県中央、南部の医療機関に転院したと説明。うち500人はすでに退院できる状態にあるが、次の受け入れ先が決まらず、院内にとどまっている状態にあるとした。

 このため、自施設の患者の手術予定を先送りする事例や、満床を理由に救急搬送を断る事例も生じているという。


 ※当初の記事で、「4つの病棟のうち、3つは」としましたが、「3つの棟のうち、2つは」に修正します。「330人程度」は「330~350人」に修正します。恵寿総合病院から申し入れがありました。

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