被災地の医療体制、「再建」視野に支援  浅沼医政局長【無料】

2024年1月26日 4:30

震災対応について語った浅沼医政局長

 厚生労働省の浅沼一成医政局長はじほうの取材で、能登半島地震の被災地への対応について、地元の医療機関・医療体制の再建も見据えて「工程を考えながら支援していく」と述べた。

 浅沼局長によると、震災から3週間以上がたち、急性期の災害対応はほぼ終了した。現在は、職員の疲労や職員不足の問題を抱える奥能登や七尾市の公的病院にDMAT(災害派遣医療チーム)などを派遣。関係団体の協力の下で、病院看護師も派遣している。

 DMATなどの活動について、「地元の方々にとってつらい時期なので、少しずつワークシェアやタスクシフトしながらやっている」と説明。その上で、「あくまで短期間の支援にすぎない。最終的には、地元の方々にやってもらわないとうまくいかない」と話した。

 支援する側は「どうしたら地元の人たちが医療体制を継続できるか」、被災した側は「継続性や実効性のためにどう対策を立てていくか」という観点に立ち、両者で協力すべきだとした。

 急性期病床の不足が報告されており、急性期以外の患者は、慢性期・回復期病棟や高齢者用福祉施設、2次避難所などに移す必要がある。「被災者でもある心の状態を考えれば難しいとは思う」と配慮を示しつつも、「地域医療を守る観点からもやらないといけない」と話した。

 災害関連死の対策としては、避難所で不調を訴える人を、極力早く医療につなげるべきだとした。行政の目が届く指定避難所以外に避難している人たちも確認し、基礎疾患保有者や高齢者を指定避難所、2次避難所に移すことが重要だとした。

●地元の医療従事者には「不安」も  支援チームは「寄り添って」

 健康局結核感染症課(当時)の課長だった2016年、熊本地震の被災地で感染症対策に当たった経験を持つ。

 当時の経験も踏まえ、派遣された医療従事者は、「被災地に入ると、非日常の様相に無意識に高揚する」と説明。一方、地元の医療従事者は、「自身も被災者で、極限の疲弊の中で被災地を支えている。支援チームへの期待だけでなく、どのような人たちが来るのかという不安も半分ある」と指摘した。

 支援チームに対しては、「地元の職員に寄り添って相互に情報や知恵を出し合い、常に謙虚さを忘れないよう、意識して活動してほしい」と呼びかけた。

 現場では、専門の枠を超えた要望が来ることにも言及。被災者のため、できるだけ可能な範囲で受け止めるよう求めた。「できないことはたくさんあるが、どうしたらできるか、どうすれば解決できるか、という姿勢で臨んでほしい」と語った。

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