被災地の感染症対策、「公衆衛生」の視点で  日赤・林氏【無料】

2024年1月24日 4:30

取材に応じた日本赤十字社医療センターの林氏(右)と園田氏

 能登半島地震の被災地で、日本赤十字社・本社救護班第1陣として活動した日本赤十字社医療センターの林宗博救命救急センター長、園田祐子看護師長は本紙の取材で、現地の課題について語った。林氏は感染症対策として、特に公衆衛生の視点に立った環境改善の重要性を強調した。

 日赤は22日午前10時時点で、救護班(DMAT含む)を137班(延べ数)、災害医療コーディネートチームを42班(同)、被災地に派遣している。

 林氏と園田氏は、発災後の1月5~7日に現地での活動に従事した。珠洲市健康増進センター(市生活サポート部会、現在は市保健医療福祉調整本部)を拠点に、市内の避難所を巡回。避難所の衛生環境や健康状態の情報収集などに努めた。

 園田氏は、避難所の課題として、「発災当初は、トイレ事情やゴミ回収といった衛生面のほか、薬の供給体制などの問題もあった」と振り返った。

 林氏は「避難所は毛布だけで暖房がなく、非常に過密な中で生活している状況だった。健康状態を含めて、避難所ごとの評価を行い、今後どのような支援が必要かを調査した」と述べた。

 当時から避難所の一部では、呼吸器系や消化器系の感染症が発生していたと指摘。対策として、「手が洗えなくとも、アルコールで消毒するなど、感染予防に努める。避難所での土足生活をできるだけやめるなど、環境の保全も必要だ」と述べた。暖房の整備、きれいな水の供給と、環境を変えることで、感染症の蔓延を抑えられるとした。

 避難所で「密」を回避する重要性にも言及。「必要以上に密接にならないように、避難所の管理を行うことが必要。2次避難や仮設住宅への移行なども進め、一般家庭の生活に近い人口密度にしていくべき」と提言した。

●「こころのケア」、行政職員や医療者も

 園田氏は、救護班では、震災直後から避難所の人々のケアに努めていると説明。今後は、行政職員や医療従事者など、支援を行う側のケアも重要だとした。「行政職員や医療者は自身が被災している中でも、働かざるを得ない状況になっている。そういう方へのこころのケアも必要になる」と語った。

●「悪条件」重なる、支援に時間

 林氏は、過去の災害との違いとして、道路・通信などのインフラが強靱でないこと、真冬の豪雪地帯で発災したことが、かなりの障壁になっていると指摘。さらに、孤立集落の発生などの地理的問題が、被害の全体像の把握を難しくしているとした。「そういった悪条件が重なり、支援を展開するのに時間がかかっている」と話した。

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