日本医師会は、国内で被災した外国人患者に対し、国籍・言語を問わず、必要な医療を提供できる環境を整えるため、「災害時・遠隔医療通訳サービス」を1日付で導入した。能登半島地震でも活用する方針だ。黒瀨巌常任理事が本紙の取材で説明した。
サービスは、日医非会員を含めて、災害発生時に現地に派遣されたJMAT(日医災害医療チーム)や、被災地の都道府県・郡市区医師会が利用できる。利用料は日医が負担するため、無料だ。
被災した外国人を、避難所などで診察する場合を想定。電話(音声)やビデオ(映像)を通じて、医療通訳の言語サポートを受けられる。対応時間は、電話が午前8時半~午前0時、ビデオが午前8時半~午後6時。
以下の19言語に対応する。▽英語▽中国語▽韓国語▽ポルトガル語▽スペイン語▽ベトナム語▽タイ語▽ロシア語▽タガログ語▽フランス語▽ヒンディー語▽モンゴル語▽ネパール語▽インドネシア語▽ペルシャ語▽ミャンマー語▽広東語▽アラビア語▽ウクライナ語―。
医療通訳のサービスは、2020年4月以降、日医のA1会員向けのサービスとして導入している。今回は、災害時に活用できるサービスとして新たに立ち上げた形だ。
●外国人患者の「安心・安全につながる」
黒瀨氏は、サービスの利点を説明。「医療は言葉の表現がとても重要だが、外国の方が医学用語や具体的な症状を、日本語で表現することは難しい。災害時でも、医療通訳のサポートを受けられれば、外国人患者の安心・安全につながる」と述べた。
能登半島地震を受け、日医は1月5日付で、全国の都道府県医に対し、JMATの編成を要請する通知を出した。その中で、サービスを今回の地震で活用できると周知した。
サービス導入に当たっては、昨年11月の災害時情報通信訓練(防災訓練)で、試験運用を実施。避難所の救護室で活動するJMATが、国籍不明でコミュニケーションがとれない訪日外国人を診察する想定で、サービス利用の試験をした。
訪日外国人の母国語がベトナム語であることを特定した後、ベトナム語通訳者を介して問診を開始。患者がどのような症状なのか、確認した。中国語でも訓練を手がけた。
訓練に参加した黒瀨氏は「ビデオ通話で、医師・患者と通訳者が映像を共有することで、スムーズに診察が行えた。衛星通信だったが、タイムラグを感じることなく利用できた」と語った。
今後、日医のJMAT研修などで、サービスの利用方法を周知し、さらに普及を進めていく方針だ。