ドクタージェットの恒常的な運用を目指す「日本重症患者ジェット機搬送ネットワーク(JCCN)」は、4月から小児重症患者固定翼機搬送試験運航事業を始めた。3日までに、計3件の搬送を手がけた。福嶌教偉理事長は、ドクタージェットの運用で、医療資源を効率的に活用すれば、地域の医療を守ることにつながると説明。事業資金を確保するため、7月にも、2度目のクラウドファンディングを実施する考えを示した。
ドクタージェットは、ドクターヘリと比べて、▽都道府県をまたいで移動できる▽夜間や悪天候でも稼働できる▽振動が少なく、高度な医療機器を使用できる―といった優位性を持つ。
PICU(小児集中治療室)は全国に35施設しかない。小児に高度な医療を提供できる施設が限られる中で、JCCNは、ドクタージェットのネットワーク整備を目指している。今年度は試験運航事業を手がけ、その結果を踏まえて、政府が来年まとめる「骨太の方針」への反映を目指す。
試験運航事業では、愛知県小牧市の県営名古屋空港に、ジェット機を常備。搬送の要請を受けると、PICU設置病院の医師らを最寄りの空港で搭乗させ、要請元の都道府県まで患者を迎えにいく。4月には石川県から愛知県、5月には鳥取県から兵庫県、新潟県から東京都に重症患者を搬送した。今後、必要があれば、治療によって一定程度回復した患者を、地元医療機関に戻すバックトランスファー(逆搬送)も行う予定だ。
福嶌氏は、ドクタージェットを利用すれば、小児重症患者を救うだけでなく、「地方の医療の質を上げる」ことにもつながる、との認識を示した。
高度医療を要する患者を他地域に搬送することで、その地域での貴重な小児科医の負担を和らげ、結果として、他の患者たちに必要な医療を適切に提供できると指摘。高度医療を提供する施設や体制を新たに整備するよりも、ドクタージェットを活用した方が、圧倒的に予算を抑えられるとした。
●募った1500万円、すでに半分
試験運航事業での搬送は「年間30件程度」を想定しているが、それを上回る可能性もある。事業費用として、昨年度に実施したクラファンで獲得した約1500万円を充てているが、すでに半分近くを費やしたという。昨年度のクラファンでは、目標を1億円としたものの達成できず、飛行場や人員計画などを変更した経緯がある。
費用を補うため、7月にも再び、クラファンを行う。5月にはJCCNが認定NPO法人になり、寄付金控除の対象となった。搬送事例の積み上げで認知度を高め、広い範囲から寄付を募りたい構えだ。