厚生労働省は29日に薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会を開き、新薬の承認や一変承認に関する審議事項8件を了承した。国内初のC型非代償性肝硬変治療薬であるギリアド・サイエンシズの「エプクルーサ配合錠」(一般名=ソホスブビル/ベルパタスビル)なども含まれている。いずれも年内をめどに承認される見込み。
エプクルーサ配合錠は、IFNフリー薬「ソバルディ」と、NS5A阻害作用を持つ新有効成分ベルパタスビルを組み合わせた配合剤。新有効成分含有医薬品・新医療用配合剤に該当する。適応は「C型非代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善」および「前治療歴を有するC型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善」。
C型非代償性肝硬変に対してはエプクルーサ単独で使用するが、C型慢性肝炎とC型代償性肝硬変については、同日の部会で同じく適応追加が了承されたMSDの抗ウイルス薬「レベトール」(リバビリン)との併用で用いる。
承認されればC型非代償性肝硬変の適応を持つ国内初の薬剤となる。国内ではHCV感染患者のうち、非代償性肝硬変患者は約3万5000人と推定されている。
海外では、欧米を含む52の国や地域で承認済み。
●小野薬品の悪性黒色腫薬2剤も
小野薬品工業のBRAF阻害剤「ビラフトビカプセル」(エンコラフェニブ)とMEK阻害剤「メクトビ錠」(ビニメチニブ)は、いずれも新有効成分含有医薬品で、「BRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫」に対して併用する。ともに希少疾病用医薬品に指定されている。全例調査などが承認条件。海外では32の国や地域で承認済み。
ファイザーの不可逆的汎ヒトEGFRチロシンキナーゼ阻害剤「ビジンプロ錠」(ダコミチニブ水和物)は、非小細胞肺がん(NSCLC)に対する新有効成分含有医薬品。適応は「EGFR遺伝子変異陽性の手術不能または再発NSCLC」。海外では承認されていない(今年8月時点)。
MSDの「ザバクサ配合点滴静注用」(セフトロザン硫酸塩/タゾバクタムナトリウム)はレンサ球菌属、大腸菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、プロテウス属、緑膿菌に対する広域抗菌薬で、尿路感染症や腹腔内感染症の治療に用いる。新有効成分含有医薬品・新医療用配合剤。海外では66の国や地域で承認を受けている。
ノバルティス ファーマの乾癬治療薬「コセンティクス」(セクキヌマブ〈遺伝子組換え〉)は「強直性脊椎炎」の適応を追加する。海外85カ国以上で承認済み。MSDの抗PD-1抗体「キイトルーダ」への「高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形がん」の適応追加を含めると、計8件となる。
●「ヘムライブラ」や「テセントリク」の適応追加も
一変承認に関する報告事項3件も了承した。中外製薬の血友病A治療薬「ヘムライブラ」(エミシズマブ〈遺伝子組換え〉)は「インヒビター非保有」の適応を追加する。現在の適応は「インヒビター保有」のみ。非保有の適応追加が承認されれば使用対象患者が大きく拡大することになる。また現在は週1回の皮下投与だが、2週に1回投与や4週に1回投与も追加する。
中外製薬の抗PD-L1抗体「テセントリク」(アテゾリズマブ〈遺伝子組換え〉)は、NSCLC(扁平上皮がんを除く)について、他剤(カルボプラチン、パクリタキセルおよびベバシズマブ〈遺伝子組換え〉)との併用によって1次治療で用いることができるようにする。最後の1件は、キイトルーダのNSCLCや悪性黒色腫に関する適応の拡大となっている。
このほか同日の部会では、ギリアドのHIV-1感染症治療薬ビクテグラビルナトリウムや、先駆け審査指定制度の対象品目の一つであるIDA社の遺伝性血管性浮腫(HAE)発作抑制薬BCX7353の希少疾病用医薬品指定も了承した。
大塚製薬の抗がん剤「ブスルフェクス」など医療用医薬品の再審査結果(2件)も報告。いずれもカテゴリーⅠだった。【日刊薬業】